濁点が二つだけ

 今の仕事で行っている実験では、ウォーターバスというのをよく使っています。
 ウォーターバスというのはいわば恒温槽のような物でして。早い話、水の温度が一定に保たれた浴槽です。その中にサンプル瓶などを入れることで、瓶の中に入っている液体の温度を保持してやる代物です。
 
 で、最近よく使っている温度帯が50度なのですが、そのウォーターバスを見るたびに『シャドウゲイト』の顔が思い浮かぶんですよ。
 私も最初はなんでかなー? と思っていたんですか、ようやく分かりましたよ。











 似てるんですね。
















 響きが。


















 ごじゅうど(50度)と



















 こじゅうと(小姑)。


















 ほーら平仮名にしてみるとそっくりー。

 やー、日本語ってホント上手くできてますよねー。
 それでは今日はこの辺で。
 サヨナラ、サヨナラ、サヨナラー。

 

 














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もう名前も『テキトー』でいいよ

 昨日のこと。
 私のチームのリーダー(『逆コナン』ではない)が、ニヤニヤしながら話し掛けてきまして。


「飛乃君、所長が飛乃君のこと、すっげー気に掛けてたよ


 どうやら判子を貰いに行ったところ、なぜか私のことが話題に上がったようで。


『あいつは頑張れる奴だから。ちゃんとやってるか?』とか、何か結構買われてるみたいよ」










 なぜか気に入られてるみたいです。










 まぁ実に迷惑な話なのですが、実際に自分でも頑張ってると思うし、そんなに悪い気は――













「だから『何か頑張ってるっぽい感じのことを聞いてますけど』、って言っといた」
















 うぉい!

















 ……もうこいつから振られた仕事はテキトーでいいな。

 
















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そろそろ本領発揮?

 本日。
 初パスポートを取って参りました。
 はっはっは。今まで海外未経験だったので、そんな物は持ってなかったのだよ。
 そしてこれからも要らないだろうと思っていたのですが、今の部署では仕事上必要になる可能性が大だと言われ、業務命令で取ってこさされました。


 数々の紆余曲折を経て、ようやく手に入れたパスポート。


 そこには当然、顔写真なるものが貼られているわけでして。



 で、私は写真うつりが悪い、と。










 『逆コナン』が見た時にゃあ、












「それ空港で止められない~?」











 『シャドウゲイト』が見た時にゃあ、












「あんた死人みたいだね」












 『ザラキ』が見た時にゃあ、













「フ……(失笑)」














 でもいいんです。
 こいつらがこういう性格だということは知ってますから。
 別に心に傷を負うようなことではありません。








 ただ『大胆撫子』に、



















「あ、期待を裏切りませんね


















 どういう風にだ。



















 ……もう彼女の中で、私はそういうキャラになっているようです。

















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おじさんが高校生の時は誰も持ってなかったんだよ?

 えー、今日。午前中ちょっと出張に行って参りました。
 特に何事もなく終わったのですが、会社に戻ってくるなり『シャドウゲイト』に詰め寄られまして。








「飛乃ぉ! 何回も連絡入れたのになんで出ないんだよ!」









 どうやら私の携帯に何度も着信を入れていたようで。それに一度も出なかったことにご立腹の様子。


 いやぁそれには深い事情がありましてですな。

 実は何を隠そう私、
















携帯を携帯しないんですよ

















 なんつか、煩わしいというか面倒臭いというか。こちらから掛ける必要のある時は持って行きますが、それ以外の時はお家で放置プレイ。
 携帯を家に忘れると不安で不安でしょうがないという意見を良く耳にしますが、私には全くもって考えられないことです。

 が、他の人達からすると、そんな私の考えが考えられないようでして。


 特に『大胆撫子』などは、





















「それ、どうやって生きていくんですか?






















 恐いくらい真顔でした。


















 ……なんかこう、『年下おかみ』を彷彿とさせてくれるのは気のせいでしょうか。

















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間違いだらけの手毬歌、してくれますか?3

 新型インフルエンザが流行っております。なんか感染した人はもう殆ど犯罪者状態……。さて、我が家族は大丈夫でござるかなぁ(連絡しろよ)。

 えー、そんなわけで第三話でございます。
 昴と菊華が妙に素直すぎる気がしたり、小梅が異様に腹黒く見えたりと、実際に書いてる時は全く違和感のなかったところにひっかかりを覚えてみたりしながら推敲しておりました。

 果たして小梅を魅力的に書き上げることができるのだろうか……。物語の都合上、彼女の視点を織り交ぜることができないのが非常に歯がゆい。

 さて、小梅ちゃん悪い子なのでしょうか、良い子なのでしょうか。小夏との関係はとか、まだまだ伏線をバリバリ張っている状態で、手毬歌の解読が始まりました。物語のタイトルにもなってる手毬歌。当然かなりの中核を担っております。
 けど、これを使おうと思ったのはプロットがほぼ完成した後だったりするんですが(汗)。


 やー、最初は七不思議だけで行くつもりだったんですが、ぷらぷらとネットサーフィンをしておったところ、某所の掲示場で自作の手毬歌を上げておられる方がいたので、その人に触発されて「俺もやりたい!」となりました(単純)。
 で、やはりこういうのは何通りもの解釈ができた方が面白いんだよなぁ、と思いながらうんうん頭を捻って絞り出しました。
 はてさて、この歌が何を表すのか。
 以前なら企画物にでも仕立て上げようとかという気が起きていたのですが、今はサッパリです(笑)。リアルが忙しくて書くだけで精一杯でございます(汗)。いや、マジでやることスゲェ盛り沢山なんだよ……。まぁやり甲斐はあるんだけどさ。

 えー、では。今回はこの辺で。

 小梅の狙いは。院長の企みは。菊華は真実に辿り着けるのか。そして通天閣に触り放題となった昴はどうなってしまうのか(笑)。

 更新ペースはちょっと上げられそうもありませんが、気長にお待ちいただければ幸いです。ではではー。
















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『そして感覚は麻痺しだす』

 日々の実験を行う時、今は大体『シャドウゲイト』と一緒になってやっております。彼女が一応、直属の上司にあたるので、学ぶことは沢山あります。
 今日も油の分析について、色々とレクチャーしていただきました。そして色々とダメ出しされました。

 分析はまず最初にサンプリングを行うのですが、どうも私の場合その量が少ないようなんです。なので機器分析に掛けた時に値が小さく出てしまい、本来ならば読みとれるデータが読めないとか。
 が、私は確かに教えられた通りにサンプリングしてるんです。
 サンプリングにはピペットマンという道具を使っています。















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 コレです。













 こいつで10マイクロリットルという少量の油を取るのですが、何回やっても少ない。
 なので仕方なく、もう一度『シャドウゲイト』にお手本を見せて貰うことに。














「いい? ちゃんとこうやって目盛りあわせるでしょ?」











 うんうん。













「で、先にチップ付けて、この瓶の油にずぶっと刺す」












 ええ、ええ。












「そしたらチップの周りにも油がべっとり付いてるから、コレで良い感じになるのよ」



















 お前が多いんじゃん。


















 てか、ソレ正確に測れてないじゃん。















 ピペットマンってのはチップの中に吸い込む量を合わせてるんだから、外にはなるべく付けないようにするのが基本でしょ?
 











 なのにべっとりって……。













 まぁ……どこにでもあるよね。

















 ローカルルールってヤツが。
















 はぁ……。
 


















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『大胆撫子』に、決ッ定!

 えー、私の部署には新人さんが一人います。
 女性です。私の隣りに座っております。
 で、まぁこういう席配置になった場合、私が彼女のお世話がかりをしなければならないのですが、いかんせん私自身もここに来たばかり。
 仕事の内容について教えられることはあっても、教えることはあまりありません。
 が、それでも一般的なことであれば――例えば事務用品の申請の仕方だったり、経費精算のやり方だったり、報告書の書き方だったり、あとはゴミ捨てとか。


 ウチの会社、分別とか結構キビしくて、何をどこに捨てるのかが分かりにくかったりするんです。
 なので新人さんの教育の一環としてゴミ捨てを開始。

 目的地はパイロット。

 そこの冷凍庫に大量に溜め込んである生ゴミを処理するのが今回の目的です。
 
 で、そのまま運ぶのは当然キビしいです。









 何せ大量なので。












 そこで登場するのが台車くん。
 彼に乗せていけば、どんなに重い荷物でもらーくらく。
 それを実験室から持ち出し、新人さんと一緒にパイロットまで移動していると、







「あのー……」







 無言の間が気まずかったのか、彼女の方からためらいがちに声を掛けてきてくれました。
 この新人さん、今時珍しいくらいのお淑やかな女性。
 非常に謙虚奥ゆかしく癒し系の可愛い顔をしております。

 そんな彼女が言ったんです。




 台車を押しながら。







 こちらを上目遣いに見て。








 もじもじと恥ずかしそうな表情をしながら。

















「乗りますか?」

















 ……。
















 ……一瞬、何を言われたのかよく分かりませんでした。









 そんな私のリアクションを見て取ったのか、新人さんは続けて、

















「私が飛乃さん、運びましょうか?



















 萌えした。


















 まさか。まかさ! さかまぁ!






 彼女の口からそんな予想外のセフリか飛び出すとは!




 きっと彼女なりに場の雰囲気を和ませるために言ったことなんでしょう!




 いかにも“新人さん”といった感じの彼女が、そんな大胆発言を!











 素晴らしい! おじさん感動した!










 その気遣い! これから先きっと役に立つ時がくる!










 間違いない!





















 ……まぁ、乗らなかったけどさ。



















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高見を目指す者

 今の部署は非常に秘密主義的なところでして。
 まぁ会社の中核を担う場所なので、社内秘も沢山ありますから仕方ありません。
 なので普通の会話であっても暗号化されています。
 「SOS」とか「G-25i」とか「TMLS」とか「サル」とか「ティア」とか。
 内部の人間が聞けば分かることでも、その略号が何を意味するのか理解できない人にはチンプンカンプンです。



 この部署に来て約一ヶ月半。
 私も最初のころは「ここって日本だよね?」と、眉間に深いシワを刻む毎日でした。しかし最近は大分慣れてきて、私自身も暗号で話せるようになってきました。



 が、未だにどうしても付いていけない会話があります。



 それは例えば一昨日のこと。
 『逆コナン』『シャドウゲイト』の会話。










「ね~ね~ね~、アレやった? アレ



アレ? ああー、アレね。やっときましたよ」



「じゃあさ~……後……え~っとなんだっけ?」












「コレとコレとコレでしょ?」















「そう~、ソレとソレとソレ

















 ドレとドレとドレだよ。



















 ……この暗号を使いこなせるようになるには五年くらい掛かりそうです。


 

 















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体は大人、頭脳は子供、その名は『逆コナン』!

 えー、今日。実験室で仕事をしていた時のこと。
 我がグループのボスが入って参りまして。
 一応、私の分野のトップで、会社全体から見ても結構上の方にいる方です。







 ただ非常に気分屋で、寂しがり屋で、ドスケベですが。









 で、ボスがぷら~と私の近くに寄って来て言うんです。



「なぁ~飛乃~。今日さ~ミーティングあるの知ってる~?」




 ダッるそうな声ダッら~~っと。




 えー、本日はですな。自衛消防隊のミーティングがございまして。
 私もその部会員の一人で、ボスはその部会でもボスなんです。
 ひょっとして忘れてないか確認にきたのかなー? と思いながら私は「はい」と返答。
 ええ、勿論覚えてますよ。



「じゃあさ、どこでやるのか知ってる~?」



 ええ、勿論。
 三階の第二会議室ですよね。



「じゃあさ、何時からやるのか知ってる~?」



 ええ、勿論。
 あと五分後ですよね。そろそろ行こうかと思ってました。















「じゃあさ、あの時計遅れてるの知ってる~?」



















 ええ、……エーーーーッ!?
















「遅刻だよ~」
















 お前もだろうが!




















 ……何か、ほんっっっっとにガキなんだよなー。

 
 
















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間違いだらけの手毬歌、してまれますか?2

 うーん、休みボケがイマイチ抜けきらない。
 GW中に、もちょっと書き進めたかったんだけどなぁ……。
 えー、そんなワケで第二話です。
 昴と菊華の初対面と、悪役(?)淫蝶の登場。そして更に深まるミステリアス、雛守のもう一つの顔、小梅ちゃん。
 幽霊だ、手毬歌だ、七不思議だと、ちょっと詰め込み過ぎた感がありますが、最後にはちゃんと纏めるつもりなので大丈夫です(当たり前?)。
 
 今回は完全に菊鹿視点オンリーということで、彼女の“一般的な”目線から白雨病院の説明を色々と挟ませていただきました。
 このお話、常識人が殆ど登場しないので、こういう人材は貴重なのですよ。昴とかだと、完全に読者置いてけぼりで、深く考えずにガンガン突っ走ってしまいそうなので非常にコントロールが難しい……。
 ま、菊華もこのお話が終了する頃には、立派な非常識人になっていると思いますが(すでに、という説もなきにしもあらず)。



 ちなみに彼女が“ゴキブリ”を接頭語、接尾語に使用するのは完全なるノリです。



 菊華は一応、昴のストッパー的な役割を担わせるつもりです。
 前作の千冬もそれなりにはツッコんでいましたが、彼女は別にまんざらでもないような節があったので、今回はもう真っ正面から否定してくれるキャラをと意気込んで配置しました。まぁ昴の問題発言にはこれくらいで調度いいだろう、と。
 壮絶などつき漫才になりそうですが、冷ややかに見守っていただければ幸いです。
 そして流血の中に愛が……!
 ……ないか。

 まぁとにかく、今回は色々と複雑です。
 隔週ペースで、私の頭の中でごっちゃにならないか、今から心配です。

 そんなわけで今回はこのへんで。
 来週からはフルに仕事が始まってしまうので、また忙しい毎日になりそうです。
 ではではー。

 



















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「ゴミが付いてますよ」

 マレーシアの方との会話の一コマ。
 話している途中、私は彼女の髪に何かの切れ端が付いているのを見付けまして。
 黙って取るとビビられそうなので、何と言うべきか頭の中で考え――
















「Dust is stuck in your head」

















(あなたの頭の中でほこりが立ち往生してますよ)


















なんでケンカ売ってんの?




















 中村雅俊の「ミスターブラウン、バナナが耳に入ってますよ」思い出した。


 

 ↑「1:30」から



















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お前は『シャドウゲイト』で

 マレーシアの人がこちらにいる間は、どうしても会話の内容が英語圏よりになるわけでして。
 例えばメールを一つとってみても結構違います。
 まず向こうには「お疲れさまです」という、日本では冒頭にするフレーズがない。Dear[名前]で始まり、次の行からはいきなり要件です。
 やはりお国柄と言いましょうか、向こうでは回りくどい言い方はしないようですな。

 それから「よろしくお願いします」に対応する言葉もないそうなんです。日本では文末に必ず入れるのに……。



 で、そんな文化を先輩達はよく知っているワケでして。
 盛り上がってきた会話の中で、今目の前に座っている先輩女性が自慢げに、
















「向こうにはねー。辞世の句もないんだよー」

















 *辞世の句:人生の最期に残した句。俳句だったり短歌だったりする。ちびまる子ちゃんのおじいちゃんがよく詠んでいる。



















「あ、間違えた。季節の挨拶ねー」



















 どう間違えたし。



















 何かさ。こういう咄嗟の言葉って、その人がいつも考えてること出るよね。

 あと関係ないけど、『辞世の句』でググったら、こんなん引っかかったので載せときます。

 激しくワロタ。






















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じゃあ『ザラキ』で

 えー、ついこの間まで、私の部署にマレーシアの方がおりまして。
 まぁ以前にも少し触れたかと思うんですが、四月から異動になった新しい部署というの海外との繋がりがございます。なのでちょくちょく外から人がくるらしく、そのたびに我々が何かしらの相手をしなければならない、と。













 勿論英語でね。
 












 元々いる人達はそれなりに慣れているのか、さほど動じません。あたふたしているのは私と新人さんくらいのもの。
 だって、ねぇ……。そりゃ大学の時は海外の人と交流する機会も多く、なんとかそれなりに話せてはおりましたが、会社に入ってからというものとんと……。
 なのでめちゃめちゃ緊張せざるをえなくてですな。もー、毎日毎日、いつ話し掛けられるのかドキドキしながら日々を過ごしておりました。
 


 で、ある時。
 そんな私の姿を見かねたのか、英語の達者な後輩女性に話し掛けられまして。
 何と言っても彼女は帰国子女。日本語を話すのと同じ感覚で英語ぺらぺーら。








「飛乃さん、飛乃さん。大丈夫ですよ。私がちゃんとしておきましたから









 何やら自信ありげな笑みを浮かべて大きく頷く彼女。

 え? 何? ひょっとして通訳してくれるの?









「ちゃんと言っておきました。『飛乃さん、今すっごくナーバスになってるから』って」












 この場合『ナーバス』とは『緊張』の意味でして。
 まぁ彼女なりに気を利かしてくれて、私の状態を伝えてくれた様子。

















「『だから何言ってるか分からなくても、取り合えず笑ってあげてね』って」
















 いやー、そこまでご丁寧に……。

















 ……。

















 フォローじゃなくね?


















 だって通じてるのか通じてないのか分かんないじゃん。











 相手の反応で様子見できないってことじゃん。
















 つか、笑われた時点で負けじゃん。















 なーんか、ホント。あん時はすっげーナーバスになったわ……。










 『止めの一撃』って、きっとこういうのなんだろーな、って思った。


 
















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GW始マタ

 にもかかわらず、この体調不良はいかがな物かと……。
 頭イタイ、お腹イタイ、熱っぽい……。
 まぁ今まで新しい環境で頑張ってきたけど、連休による気の緩みで、ソレが一気に吹き出してきたというのが妥当な考察か……。




 貧弱ゥ! 貧弱ウウウウゥゥゥ!
  





 えー、そんなわけで続きです。

 
 歯医者に駆け込み、基本的な手続きを済ませてから待つこと十分。
 治療室に通された私は、おバカな経緯を包み隠すことなく説明しました。
 で、歯医者からの一言。















「それは抜くしかないですねー」













 ……。















 ……は?

















「親しらずの治療となると、イコール抜歯という形になります」


















 ……え? いや、でも。前の歯医者では詰め物とかしてくれたんですけど……。











「ああー、ソレしても良いんですけど、ソレやることで逆に症状が悪化することとかあるんですよねー。歯肉炎とか、聞いたことありません? 歯ぐきからが出る病気なんですけど」










 いや、まぁそりゃ知ってますけど……。











「なのでやっぱり親しらずは抜くのが一番なんですよねー」(ニコニコ)
 








 いや、そんな笑顔で言われても……。












「どうしますか? 抜くとなると心の準備とか必要だと思うんで、次回にしますか?」














 いや、そんないらない気遣いされても……。
 だって別に詰め物してくれるワケじゃないんでしょ?











「はい」(ニコニコ)











 コイツ……。

 で、一分ほど考えた末、その場で抜くことを決断。
 抜く前の準備として当然麻酔をするワケなんですが、その時に――











「はーい。じゃあタオルかけますねー」














 視界没収。














 なぜかは知りませんが、目元にタオルをかけられて何も見えなくさせられました。

 ただ口を開けて、注射器が入ってくるのを感じとるのみ。
 ひょっとすると注射の針を直視できない人に配慮したことなのかも知れませんが……。















 余計に恐い。















 想像してみてください。









 例えば階段を下りる時、目を瞑ったらどうなるか。










 例えば料理をする時、目を瞑ったらどうなるか。












 例えばエロゲをする時、目を瞑ったらどうなるか。


















 恐いでしょう?













 ソレと同じです。

 まぁ歯科医なだけにしょうがないのかとか、オヤジギャクで自分を誤魔化しつつ、何とか麻酔終了。
 そしていよいよ歯を抜く刻。

 この時も当然目にはタオル。
 そして――











「じゃあ胸元にもタオルかけさせていただきますねー。服にが付くといけないのでー













 飛ぶの!? バカなの!? 死ぬの!?













 ちょ、やっぱまだ心の準備が――






「はーい。じゃあ行きますねー。メキとかバキとか嫌な音すると思いますけど気にしないで下さいねー









 ちょ、待っ――












 メキィ!











 耳の奥で響く異音。











 バキィ!












 顎の骨を通じて届く怪音。







 も、もぅダメだ……。










「はーい、もう歯は抜けましたよー」












 ……え? 終わっ、た……?










「じゃあ後お薬ぬって終わりですからねー」












 えーっと……。













 全然痛くなかったんですけど。














 ……や、そりゃもの凄い音はしてましたよ?
 けどホントに音だけで、痛みは全く……。








「はい。終わりです。お疲れさまでしたー。コレが抜けた歯ですねー」






 言いながら先生が見せてくれたのは、1/4ほどが欠けてなくなってしまった私の親しらず。虫歯になっていたところがかなり脆く、まるでシャーベットのようにボロボロと……。
 そりゃイテぇわなぁ、とか妙に納得感心していると治療は完全に終了。
 お金を払い終え、次の治療の予約をし終え、何事もなかったかのように帰宅。
 うーん。これなら逆の親しらずの治療(抜歯)も、安心して任せられるかなー。

















そう思っていた時期が私にもありました

















 夜。













 麻酔が完全に切れて――



















 断末魔の叫び声がマンション内に響いたという。
















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