コレが俺の本性?

 えー、昨日の夜。私がゲームをしていると突然携帯が鳴りました。
 ディスプレイに表示されたのは見知らぬ番号。
 取りあえず出てみると、

「剣弥ー? 分かるー? おばーちゃん」



 背筋が凍り付きました。

 電話の主は母方のおばあさん。私との相性は絶に悪いです。
 しかも年末実家に帰った時、弟の結婚話に大反対していた母親の味方。あの時も弟を責め、私には真面目に結婚するようにとキツク言ってきた本人です



 ぶっちゃけ天敵です。



 そんな祖母が私に直接電話とは。お見合いの話しでも持って気やがったのかテメーヤローシメルゾと本気で思いました。
 が、

「今ねー、おチビちゃん達が来てんのよー。お正月に挨拶できんかったでしょー。丁度良いから今しといてー」

 『おチビちゃん』というのは、今年で高二、中三になった私の二人の従姉妹のことです。
 祖母は二人がどんなに大きくなっても『おチビちゃん』と呼びます。昔から言い慣れた呼び名だからでしょう。

 まぁ、ともかくケンカを売りに来たわけではなさそうなので一安心。
 私が「分かった」というと、電話の向こうで声の主が変わりました。

「剣にーちゃん。あけましておめでとーございます」

 最初、誰だか分かりませんでした。声が全く違っていたからです。
 彼女達と最後に会ったのはもう五年以上も前。私が大学院の実験やら就職活動やらで忙しくなってからは、まったく会っていませんでした。
 懐かしいなー、と思いながら「あけましておめでとう」。
 そして第二声を発そうとした私は固まってしまったのです。


 共通の話題がない。
 

 これ以上何を喋ればいいのか分からない。


 しかし大阪人として会話を盛り上げないわけには行きません。
 私の頭はプレステ5の処理速度バリに高速回転。過去の出来事が走馬燈のように頭を駆けめぐります。
 脳内で過剰分泌されるノルアドレナリンとよく分からない紫色の液体
 日常が戦場に、安寧が「ありえねー!」に変わり始めた時、私の頭にが舞い降りたのです。




「せ、背どのくらいになった?」




 『つまんねーよ』というが。




「ん、んーと、今160ちょい、かなー……」




 終わった。終わってしまった。
 会話が続かない。そもそも身長の話題を膨らまそうなんて無理だ。

 私はすぐに次の話題を要求されました。


「そ、そっか。えーっと……今いくつになったんやったっけ」


 『もう帰れよ』というも降って来ました。


「今年で17、かな……」


 苦しい。もの凄く息苦しい。
 濃度が足りない。笑いの濃度が。
 ボケろ。何とかボケて盛り上げろ。
 私の中のもう一人の自分が叫びます。


「そっかー。もう17なんやー、早いなー。俺まだ16かと思ってたわー。ボケとんなー



 『終了』というが目の前に差し出されました。



 結局、相手も話が続かないことを悟って妹にバトンタッチ。
 すでに頭の中、脱血漏流(だっちろうる)の私には、当然気の利いた言葉など思い浮かばず、あえなく撃沈。


 受話器を置き、私はゲームを再開することも忘れてしばらく放心しておりました。
 ……なんと言いますか、ひょっとしてコレが俺の真の実力? みたいな。


 過ぎ去った時間はもう取り返せない。
 きっと彼女たちの頭には『論外。の価値なし』とインプットされたことでしょう。
 嗚呼……。


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 謝楽さん! 『誰が為に冥霊は吼える』へのご感想どうも有り難うございました! 嘉木堂のセリフ回しは意識して凝った部分もありますので、印象に残ったと言っていただけると嬉しいです。
 またいつか長編を書こうかと思っておりますので、嘉木堂と藍原さんの夫婦コンビを支えてあげてください(笑)。

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