理不尽な難癖

 今日、実験で衛生検査を行う予定でした。
 衛生検査というのは商品の品質をどこまで保証できるかを検査する作業のことです。商品に雑菌がいないかを調べるため、寒天培地を使ってチェックします。
 で、衛生検査室を使用するには予約を入れておかなければなりません。私は今日の午後三時以降に使うつもりだったので、予約表にその旨をかき込んでおきました。
 すると午後一時くらいに私の社用携帯電話がなり、


『あ、飛乃君? 今日さ、衛生検査室使うよね。私も今から使うんだけど、培地一緒に溶かしといてあげるよ。どのくらい使う?』


 電話の相手は『飛躍魔人』でした。
 この衛生検査に使う培地は、三角フラスコの中に寒天の状態で保存されています。なので使う前に電子レンジで温めて溶かさなければなりません。
 どうやら『飛躍魔人』はご親切にも、自分の分と一緒に、その後に衛生検査室を使う私の分まで溶かしてくれるらしいのです。




 ……まぁ、別に溶かすのってそんなに手間じゃないんで、わざわざ気を利かせてくれなくてもよかったのですが。




 なんてことは、口をうなじの辺りまで裂かれても言えません。

 せっかくのご親切です。有り難く頂戴いたしましょう。
 私は今日やる予定だった検査を頭に思い浮かべました。
 一口に「衛生検査」といっても種類は様々です。寒天培地の種類は五種類もありますし、使う量は検査したい細菌によって違ってきます。さらに検査の中には液体培地を使う物も混じっていますので、ぱっと思いつくだけでも十以上の組合せが考えられます。




 まぁ、ぶっちゃけ、




 ンなこといきなり聞かれても分かりません。



『ねぇ、どのくらい使うの?』



 が、ンなこと『飛躍魔人』には関係ありません。
 仕事をバリバリこなすキャリアオールドウーマンの彼女。無駄な時間は最も嫌うところです。
 私は必死になって頭を整理しようとしますが、トイレの便座に座っていたところに不意打ちを食らったので、まとまる物もまとまりません(嗚呼……社用携帯電話ってドコにいても繋がるの……)。


『飛乃君? 聞いてる?』


 彼女の声に苛立ちが混じってくるのがはっきりと分かります。
 しかし私は「あー」とか「えぅー」とか意味不明な呻き声を返すことくらいしかできません。




『飛乃君!?』





 どうやら限界のようです。





『じゃぁ自分で溶かしてよね!』





 プッ……ツーッ……ツーッ……ツーッ……















 ……ねぇ。










 どうして私が怒られないといけないんでしょうか。









 私なにか悪いことしました?


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>あおいさん
 『貴方に捧げる死神の謳声 第零部』弐話へのご感想どうも有り難うございました! またメールにてご返信させていただきます。リクエスト作、楽しみにしていて下さい。ではではー。

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