邪魔者の価値

 私がお酒を飲む日はいつも決まっています。
 月曜日と金曜日です。
 週明け、エナジーチャージにと飲み明かす気合いの儀式。
 週末、お疲れさまでしたと自分をねぎらい、一人グラスを傾ける至福の一時。
 月曜と金曜の二日間は私にとって神聖なる曜日です。正直、誰にも邪魔されたくありません。一分一秒でも早く帰って、ツマミを作り、風呂に入り、部屋を仄暗くして自分の世界に入り浸りたいです。

 なのでこの二日間は朝から死闘です。

 残業をしないように、極めて効率的に綿密なる行動をします。
 が、終了間際、「飛乃君、悪いんだけどさー」とかいって急な仕事が入ることがよくあります。当然機嫌は悪くなりますが断るわけにも行かず、渋々残業……。
 しかし家で酒が待っているかと思うと仕事の進みも早いです。ちゃっちゃか終わらせて「お疲れさまでしたー」。予定より時間は遅くなってしまいましたが、やはり酒の味は格別です。


 ソレがいつもの風景。


 なんだかんだで残業が入ります。



 しかし昨日は違いました。





 ボーリング大会。



 年に一回会社で行われる催しの一つなのですが、メンドいので私は参加していません。全体の参加率もイイトコ七割と言ったところでしょうか。


 しかし今年は違いました。


 九割以上の参加率。きっと濃い新人クンがもたらした魔力か何かなのでしょう。
 さらにボーリング大会の開始時間は六時(その後で二次会の飲み会があるので)。
 終業チャイムよりも少し前に居室を出なければなりません。
 で、私のいる部屋の人達は、私以外全員参加。
 チャイムが鳴るころには居室に私一人だけ。


 つまり、いつでも帰っていいよ状態。


 急な仕事を突きつけられる心配は全くありません。


 まだ仕事が終わってなくても怒る人は誰もいません。







 帰りましたよ。






 そりゃ勿論。






 意気揚々と。





 今日は何て素晴らしい日なんだとか思いながら。





 そしてまだ周り明るいウチからツマミを作り始め、風呂に入り、部屋を仄暗くして、一週間お疲れさまでしたの美酒を一口――













 あんまおいしくない……。








 どうしたことでしょう。 

 もうコレ以上ないくらい最高の舞台がセッティングされているというのに。妙にお酒が進みません。
 いつも残業しながら、「くそー、定時で帰れてれば今頃もう飲み始めているのにー」とか思っていたのに。そしてまさに昨日、その希望が叶えられたというのに。







 お酒がおいしくない……。






 そして私は気付いてしまいました。

 いつもお酒を美味しいと感じるのは、

 残業というストレスを乗り越えてようやく勝ち取ったひとときだからである


 と。







 なんだかなぁ……。






 ストレス社会ストレス社会とか言われている昨今、ストレスって実は見方変えりゃそんな悪モノでもないんじゃない? それとも私はまだ、本当のストレスを体感していないだけなのか……。


 なんて思ったりしたちょっとメランコリックな週末でした……。


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『ロスト・チルドレン』を読んで下さった方! どうも有り難うございました!
『三度目の正直』を定期的に読みたくなると言って下さった方! 誠に有り難うございます! やっぱり冒頭のブルマが(ry
『ひらきなおりのド天然、してくれますか?』の【前編】を読んで下さった方! どうも有り難うございました! もう少しで残りを書き終わりますので少々お待ち下さい!

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