行きはよいよい帰りはいたい

 えー、昨日。
 食材の買い出しに、近くのスーパーまで行ってきまして。
 引きこもりゲーム生活を謳歌するために、二、三日分をまとめ買いして帰ってきたのですが、を忘れてしまいました。
 一瞬、我慢しようかとも思ったのですが、卵不在のラーメンのわびしさを思い出し、仕方なくUターン。スーパーへと続く道を歩いておりますと、突然ある種の閃きが。














 ちょっと散歩しようぜ。














 別に何かキッカケがあったわけではありません。唐突です。
 まぁ強いて言うならそう言う匂いがした、と言ったところでしょうか。
 昔はよく実家の周りを一人でうろつき回ったものです。そして夕暮れの醸し出す寂しさを味わっていました。

 そんな郷愁に浸りながら、私は路地裏に一本入りテクテクテクと。
 このマンションに引っ越してきてから散策というものをしたことがないので、見るもの全てが新しいです。どうやらこの辺りはかなり高低差が激しい様子。少し歩くと結構急な階段があり、どんどん上へと繋がっていきます。

 そして階段を一段上るごとに、なぜか上がっていくテンション。

 ローグ系のゲームにはまっていたせいかもしれません。
 私はまるで何かに導かれるように上へ上へ進んでいき、そして二十分くらいかけて頂上にたどり着きました。
 すると見えたのです。














 が。














 そして近くに横たわる街並みはミニチュアサイズ。

 まさしく絶景でした。
 気分はもう最高潮。
 本当にずっとその場所に居たいとさえ思いました。






 が、お腹がソレを許しませんでした。
 普段運動しない上にスリッパでこんな場所まで来てしまったので、体が内側から悲鳴を上げたのでしょう。
 しかたなく、私は来た道を引き返し……。


















 どっち?

















 思わず棒立ちになってしまいました。

 あまりに気の向くまま上ってきたので、どこをどう通って来たのかなど全く覚えていません。

 が、私の中に焦りなどありません。

 そう、上り続けてココまで来たのだから、下り続ければ帰れるのは道理。
 適当に下りきってしまえば、すぐに知った場所に出るに違いない。

 私はそんな軽い気持ちで、海を横目に見ながら下り始めました。
 そして呑気に歩を進め、階段を見つけては下り、見つけては下り、見つけては下り、見つけては……。


















 ない。

















 あれだけ連続してあった階段が、ある時を境にパッタリと見あたらなくなってしまいました。どうやら下りきってしまったようです。しかしココは住宅地のド真ん中。













 全く知らない風景です。
















 僅かに頭をもたげる不安感。

 が、まだまだ平気です。

 なぜならは私は迷子のスペシャリスト。

 かつて、散歩していて全然知らない場所に出るなど、お昼のお弁当といえばタコヤキくらい当たり前のことでした。
 なのでこういう時、どういう心構えでどう行動すればいいのかは身に染み込んでいます。

 一番大切なのは己を信じること。
 自分の方向感覚を百パーセント信用してとにかく突き進むことが大切です。来た道を引き返すのは最も愚行です。不安は疲労を増大させますから。



















 ――と、アホな余裕間違った神託を告げてくれました。
 人に道を聞けばソレですむのに、何故か私は自分の力で活路を見出すことにこだわったのです。


















 そして三十分後。


















 ようやく住宅街を抜け、国道沿いにでました。

 が、この道も見たことがありません。

 しかし心配無用。
 国道には必ずアレがあります。
 そう、



















080502koutsuu.jpg
交通標識。




















 コレさえ見ればチョチョイのパッってヤツです。







 すぐに帰れる自信があります。







 さすが迷子慣れしているだけあります。











 で、二分ほどで見つかりましたよ。
 デカイのが一つ。
 私は速行で近くまで歩み寄り、


















 ありました。















 ありましたよ。

















 私の良く知った地名が。














 自宅近くの住所の文字が。
















 コレで一安心。
 私は胸をなで下ろし、自然と視線も下がり、




















 5km



















 \(^o^)/ちょw



















 人間、追いつめられると笑ってしまうというのは本当です。
 何か生きる希望を絶たれた気分でした。

 さて、現状をもう一度おさらいします。









・高低差の激しい場所をすでに一時間近く歩いている

・しかも履き物はスリッパである


・肉体は三十近い運動不足のオッサン




・自分を信じたためにバカを見た







・もう色々と無理



















 ヘイ、タクシー! 


















 ……手痛い出費でございました。


 でもあそこで偶然空きのタクシーが通りかからなかったら、きっと私の足はしばらく使い物にならなくなっていたでしょう。ソレを思えば安い物です。













 教訓:冒険はテレビの中だけにしようね。













 ああ……しばらく筋肉痛だわ……。






















 (ω)で? 卵は?

 ……もうどうでもいいよ。


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