日用品の正しい使い方

 今日、布団叩きをしていて思い出したことがありました。
 あれは私がまだ中学生の時です。その時読んだ漫画に、家が貧乏で布団叩きも無く、代わりに物差しで布団を叩いているというシーンがありました。小学校とかで全員に配られる竹製の三十センチの物差しですね。
 当時の私はそのシーンを見て何故か、

 カッコイイ

 と思ってしまいました。
 で、休日。中坊の私は自分の物差しを持って、母親が屋上に干した布団を叩きに行きました。
 物差しですから当然、布団を叩くために作られたわけではありません。叩ける面積は狭いし、力も入りにくいしで、効率は非常に悪いです。
 当然すぐに飽きました(ぉぃ)。

 が、屋上から下を覗き見た私の視界に映った物がありました。
 それは私の祖父が育てているお花。パンジーとかレンゲ草とか色々植えられたプラスチック製のプランターが家の壁にくっつけて置かれていました。丁度、私のいる場所の真下に当たります。
 ソレを見た私は思いました。

 突き立ててみたい

 と。
 何と言いましょうか。
 本能的な衝動? 原初の欲望? 宇宙の意思?
 例えば、そこに山があるから登りたくなるように、バナナの皮があるから踏んでみたくなるように、そば屋の出前が通りかかるから転ばせたくなるように。
 私の中で何かが訴えるのです。

 この物差しをあの土に突き立てろ

 と。
 持っていたのが布団叩きだったら、こんな感情は湧かなかったでしょう。
 しかし、私が手にしていたのは竹で出来た一本の槍
 もはや疑問を挟む余地などゾウリムシほどもありません。
 私はあの時、コレをするためにココに来たんだとさえ思っておりました。

 神経を研ぎ澄ませ、一点に集中させます。
 狙いを定め、ゆっくりと、ガラス細工を扱うかのように丁寧に手を離しました。
 まるで吸い込まれるように落下していく竹ミサイル。視界の中で徐々に小さくなり――
 が、僅かに狙いが外れていました。
 狙った場所を少し逸れ、プランターの中ではなく囲いの部分に向かっていきます。そして残念なことに物差しは弾か……

 バキィ!

 …………。
 ……へ?

 何故でしょう。私の眼下では、小規模な土石流が起こっておりました。
 小学生の文房具が見せた意外な破壊力。
 どんな物でも使い方次第では凶器になります。

 いや、別に今日、布団ばさみを五階から落としたからとか、ソレがドン引きするくらい粉々になったからとかそーゆーんじゃないですよ?

 ……マジで下に誰もいなくて良かった。

コメント


コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL:
http://hinokenya.blog74.fc2.com/tb.php/62-a6346f6c