闘病記2008 其の弐

 ――ソレは自分の体を疑うには十分すぎた。









 朝。
 全身の痛みで目が覚めた。
 時計を見る。
 五時三十分。
 目覚まし時計の目が覚めるまで、まだ一時間以上もある。だがコレ以上はもう眠れない。体が睡眠を要求していない。ソレよりも他にやるべきことを喚き立ててくる。


 すなわち――この寒気を何とかしろ。










 寒い。











 布団を頭からかぶっても、体を丸めても、一向に温かくならない。
 エアコンのリモコンに手を伸ばす。たったソレだけの動作で芯から冷えてくる。
 スイッチを押す。反応がない。スイッチを押す。やはり反応がない。押す。反応ない。










 結局、異様にシビアな角度を要求され、そんなことをしている間に体は更に冷えた。











 やはりヤバかった。睨んだとおり、コレは“単なる風邪”などではなかった。
 薬など全く効いていない。気休めにもならない。
 どうする。こんな状態では会社など行けない。休むか? コレ以上悪化させるくらいなら……。
 いや、待て。その前に試すことがある。







 速行性栄養剤。















081120fanti.jpg
 ユンケル ファンティー














 説明せねばなるまい。
 実は昨日、ドラッグストアに立ち寄って一本購入していたのだ。
 勧めてくれたのは『アバウト・ミー』。
 ビタミンの他に漢方成分も入っているので、風邪の引き始めにはもってこいとのこと。




 ただ、ちょっと値は張るが。





 ああ……確かに張ったよ。ピンピンにな。
 たった50ml1680円。 
 この小さな瓶にウィスキーボトルと同じだけの価値が……。

 なので昨日は飲まなかった。出来れば今回は飲まないでおこうと思っていた。
 本当にヤバくなった時のために取っておこうと思っていた。

 だが、今は出し惜しみをしているときではない。
 今がその本当にヤバい時。
 決断せねばなるまい。

 エアコンの設定温度を29℃にしたおかげで、何とか布団から這い出せるくらいになってくれた。
 あとはコイツを一飲みして、効果が現れるのを待つだけ。
 私は冷蔵庫からユンケルを取り出し、パッケージを開け、キャップを外し、グイっと一気のみ。




 ドロリとしたのど越し。




 かつて味わったことのない濃厚な何かが、熱い塊となって食道を下っていく。



 これで……1680円……。


 ステーキ定食ご飯大盛り味噌汁付きが……。




 ……まぁいい。きっとソレだけの価値はある。
 あと三十分もすれば、もう心身ともにビンビンに張ってくるはず。



 私はベッドに戻り、目を瞑ってじっと待った。



 10分……20分……30分……。



 変化なし。



 40分……50分……。



 変化なし。
 


 1時間……1時間10分……。





 そして目覚まし時計が目を覚ました。
















 効かねぇ。















 ちっとも楽にならねぇ。活力が漲ってこねぇ。
 確かに体は熱くな――










 体温測定開始。














 37.8℃















 ナンデスカコレハ。














 薬といい栄養ドリンクといい、どっちの味方をしてるんですか?
















 もうダメだ。


 今日は無理だ。


 悔しいがもう一日休もう。
 『アバウト・ミー』のせいでこうなったんだから、誰にも文句は言わせないさ。
 あと一日。あと一日、大人しく寝ていればきっとよくなる。だってまだ引き始めだもん。最初のうちからこんなに気遣ってるだから、体もきっとソレに応えてくれるさ。
 そう、あと一日……。







 次の日。











 体温測定。
















 38.6℃


















 あったかいよ、パトラッシュ……。

 《続く》

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